ころちゃんは、飼い主が見つかるまでの一ヶ月近く、我が家でジロと花と三匹一緒に遊びながら楽しい子犬時代を過ごした。ほんのつかの間だったがたくさんのことを吸収する成長期で、貴重な体験だったと思う。
毎日、子犬三匹と老犬一匹の山道の散歩は、毎回「騒ぎ」だった。子犬たちは、好き勝手な方向へチョロチョロ走り出す。まだ力がそんなにないので助かったが、しつけをしようにも振り回されてしまうばかりだ。
引き綱はあっという間にからまり、私の足にもぐるぐる巻きついてしまう。そうなるともう歩くことも出来ない。何回もストップし、引き綱をほどき、怒鳴り、と見ている人はさぞかしおかしかったろうなと思う。
休日には夫も一緒に峠まで全員でピクニックし、小川のせせらぎで遊ばせた。子犬にとっては何もかも新鮮で嬉しい。水の中でも飛び跳ねて、ビシャビシャ、あがってくると、すぐにドロまみれに汚れた。
庭では子犬三匹、ひとつのおもちゃを三方向から引っ張ったり、ころがったりと実に楽しそうだった。そして夜は犬小屋で体を寄せてぐっすり安心した表情でスースー眠っているのを見ると、保護して良かったとつくづく感じた。
さて、いよいよエミさんが主催する里親募集の会が始まった。場所は私の住む町から電車で三つほど乗った大きな町の大型スーパーの展示会場だ。見に行くと、そこには何頭かの里親募集の犬や猫の写真とプロフィールを書いた紙がずらっと貼られていた。
ほとんどの子は成犬、おとなの猫で子犬はころちゃんだけだった。中には腹水のたまった猫など病気で捨てられたと思われる元ペットの写真もあり、涙を誘う。飼い主は、最後までペットたちの面倒を見て欲しいものだ。病気だからと言って捨ててはいけない。ペットも家族なのだから・・・。里親募集しているエミさんは自宅に保護した犬を十頭ほどと猫を数十匹飼っている。全員に予防注射や避妊手術をさせるなど本当によくやっている。ただ大きなグループでなく預かり先が少ないので、殆ど負担はエミさんの肩に重くのしかかっているのが現状だ。これは本当に難しい問題なのだと考えさせられた。
ころちゃんを欲しいと言う人は三件あった。七匹全兄弟捕まえておれば、みんなもらわれたのに・・・・。
一番最初の希望者一家が我が家に車で対面にやってきた。人の良さそうな夫婦と小学生の女の子の三人だ。家にはその女の子の他にもう少し大きな子供が二人いるという。
そして、対面の結果、ころちゃんは、そこの家にもらわれていくことに決まった。
その日の夜、夫の車で、隣町の新しい飼い主一家の家にころちゃんを連れて行った。行くと、一家総出で出迎えてくれ、大きな子供たちも争ってころちゃんをなでまわした。家もまあまあ大きく、庭もあるようなので安心した。本当にかわいがってもらえそうだ・・・。
夫と二人だけになった帰りの車の中で、ほっとすると同時に、なんともいえない寂しさが湧き上がってきた。
ころには、情をかけないようにしていたのだが、一緒に過ごした一ヶ月は長く、しばらくは心の中にぽっかり穴が開いたかのようだった。
ころちゃんは「クッキー」と名前をつけてもらった。
その日から半年後に、クッキーは飼い主夫婦と最初に来た女の子と一緒に我が家を訪問した。クッキーは毛並みがつやつやしたかわいい女の子に成長していた。ジロと花とは久しぶりで、最初は怖がっていたが、三匹仲良く遊びだし、再会を喜び合った。
というわけで、廃屋の子犬たち五匹全員、無事に良い飼い主に恵まれ、今も元気に過ごしている。
しかし物語をここで終えるわけにはいかない。本当のこの物語の主人公は助けられなかった今は亡き、チャッピーたち、野犬の犬たちなのだ。彼らのことを書き、彼らのメッセージを伝えないと話は終らない。
(写真は、半年後に久しぶりの対面をするジロと花とクッキー。クッキーは右端。)
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